整体院・整骨院の事業計画書|公庫の書式10項目の書き方と記入例

整体院の事務スペースで、男性院長が公庫提出用の事業計画書を作成している様子

「保険施術と自費施術、どちらも扱う予定です」と融資の窓口で伝えたところ、担当者から「その比率は事業計画書のどこに書きましたか」と聞かれ、答えられなかった。整体院・整骨院の開業を控えた方から、こうした相談を受けることがあります。

日本政策金融公庫に融資を申し込むときは、公庫の書式(書式名は「創業計画書」)で事業計画書を書くのが一般的です。書式は10項目あり、整体院・整骨院ならではの注意点はそのうちのいくつかに集中しています。

以下では、10項目の書き方を記入例を交えながら見ていきます。記入例は、保険施術を扱う整骨院と自費施術のみの院で書き方が変わる項目も、違いが分かるよう、それぞれ分けています。

目次

整体院・整骨院の事業計画書は、何のために作るのか

整体院・整骨院の事業計画書を作る目的は、大きく2つあります。

1つ目は、融資を受けるためです。日本政策金融公庫や自治体の制度融資を利用するとき、事業計画書は審査担当者が事業の内容と返済の見込みを判断する材料になります。

2つ目は、開業後に自院の状況を判断するための基準を持つためです。開業前に立てた数字と、実際の売上や来院者数を比べることで、想定とのズレに早く気づけます。

整体院・整骨院の事業計画書の書き方と記入例|公庫の書式は10項目

公庫の事業計画書の書式は、10項目に分かれています。書き方を紹介する記事の多くは8項目・別の順番で説明していますが、公式PDFに記載されている番号と項目名は次の通りです。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 従業員
  5. 取引先・取引関係等
  6. 関連企業
  7. お借入の状況
  8. 必要な資金と調達方法
  9. 事業の見通し(月平均)
  10. 自由記述欄

公庫の書式には、次の一文があります。「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です。」書式そのものに従うことが目的ではなく、10項目の内容を盛り込めているかどうかが重要です。

事業計画書の項目のうち、数字がつながる3つの組み合わせを示した図
③の比率は⑨の売上に、保険の入金のずれは⑧の運転資金に、⑦の返済は⑨の利益に関わります

書式のテンプレートは、公庫のホームページの「各種書式ダウンロード」から、PDFとExcelの形で無料で手に入ります。同じページに業種別の記入例もありますが、整体院・整骨院の記入例はなく、業種が近いものでは歯科診療所と介護サービスの記入例があります。

以下の記入例は、この記事のために作成した架空の院をもとにしたものです。自院の状況に置き換えて考えてください。

①創業の動機|開業の理由と、開業までの準備を書く

「創業の動機」には、整体院・整骨院を開業しようと考えた理由と、開業までに行った準備を書きます。柔道整復師として勤務していたなかで感じた課題や、独立を決めた具体的なきっかけを書くと、審査担当者に開業の必要性が伝わりやすくなります。

審査担当者は、開業の動機とこれまでの経歴がつながっているかを見ています。「独立したい」だけで終わらせず、勤務中の経験から、どんな院を作りたいと考えたのかまで書くと、②の略歴や③のサービス内容とも話がそろいます。

記入例(架空の整骨院)
勤務先の整骨院で7年間、打撲・捻挫等の保険施術と、肩こり・腰痛に対する自費施術を担当してきました。地域に高齢の患者が多く、通院しやすい料金と予約の取りやすさを重視した院を自分の手で作りたいと考え、開業を決めました。開業に向けて、簿記3級の取得と自費メニューの研修を1年かけて進めています。

②経営者の略歴等|柔道整復師免許・実務経験を書く欄

「経営者の略歴等」には、取得している資格と、これまでの実務経験を書きます。柔道整復師免許やあん摩マッサージ指圧師免許を持つ場合は取得年と、勤務先での経験年数、担当してきた業務の範囲を具体的に書くと、施術者としての経験や実績が伝わります。柔道整復師免許を持たずに無資格で開業する場合は、資格の有無ではなく、これまでの実務経験や研修歴を書くことになります。

勤務先の名前を並べるだけでなく、担当した施術や任された業務(新人の指導、受付や会計の管理など)も書くと、施術だけでなく院を運営する力があることが伝わります。

記入例(架空の整骨院)
2017年に柔道整復師免許を取得。整骨院に7年間勤務し、保険施術に加えて自費の骨盤矯正メニューも担当してきました。勤務2年目からは新人スタッフの指導も任されています。

③取扱商品・サービス|保険施術と自費施術の比率をどう書くか

「取扱商品・サービス」には、提供する施術の内容と、売上に占める比率の見込みを書きます。整骨院で保険施術と自費施術の両方を扱う場合は、それぞれの比率を分けて書いてください。保険施術を扱わない場合は、自費メニューの内容と価格帯を具体的に書きます。

保険施術と自費施術では、1回あたりの単価も、売上が入金される時期も違います。比率を分けて書いておくと、⑨の事業の見通しで売上を計算するときの根拠にもなります。

記入例(保険施術を扱う整骨院)
保険施術(打撲・捻挫等の急性のけが)を売上の6割、自費の骨盤矯正・鍼施術(肩こり・腰痛への対応を含む)を4割の比率で見込んでいます。
記入例(自費施術のみの院)
保険施術は扱わず、全身整体(60分・6,000円)と骨盤調整(40分・4,500円)の2メニューを中心に提供します。

④従業員・⑤取引先・取引関係等|施術所にはあまり当てはまらない項目の書き方

「従業員」には、開業時に雇用する人数を書きます。院長ひとりで開業する場合は、その旨を記載すれば問題ありません。「取引先・取引関係等」は、卸売業のように取引先が多い業種を想定した項目で、施術所にはあまり当てはまりません。物販を扱わない場合は、保険請求先の審査機関や、施術で使う消耗品の仕入れ先を記載する程度で十分です。

開業後にスタッフを雇う予定があれば、その時期と人数も書いておきます。⑨の事業の見通しで人件費を見込むときの根拠になります。

記入例(架空の整骨院)
従業員開業時は院長1人で施術を行い、従業員は雇用しません。
取引先タオル等の消耗品は近隣の業務用品店から仕入れ、保険施術分の請求は国民健康保険団体連合会等に提出します。

⑥関連企業・⑦お借入の状況|既存の借入(住宅ローン等)も書く

「関連企業」は、経営者が関わる他の会社や事業がある場合に書く項目です。関わりがなければ「なし」と書きます。「お借入の状況」には、事業のための借入だけでなく、住宅ローンや車のローンなど個人の既存の借入も含めて書きます。既存の借入を書き漏らすと、返済能力の判断に影響する可能性があります。

ローンの残高と毎月の返済額は、記憶で書かずに、手元の返済予定表で確かめてから書くと書き間違いを防げます。

記入例(架空の整骨院)
関連企業なし。
お借入の状況住宅ローン残高1,800万円(月々6万円返済)に加え、今回開業のための資金として日本政策金融公庫へ150万円の融資を申し込んでいます。

⑧必要な資金と調達方法|設備資金と運転資金の分け方

「必要な資金と調達方法」には、開業に必要な資金を設備資金と運転資金に分けて書き、それぞれの調達方法(自己資金・融資・親族からの借入等)を書きます。施術ベッドや機器の購入費は設備資金、開業当初数か月分の家賃や広告費は運転資金に分けて整理すると、審査担当者にも金額の根拠が伝わりやすくなります。

施術ベッドや電気治療器などの設備は、購入先から見積書を取っておくと、金額の根拠として示せます。

記入例(架空の整骨院)
設備資金施術ベッド・電気治療器等で180万円。
運転資金開業後3か月分の家賃・広告費で90万円。
調達方法自己資金120万円、日本政策金融公庫からの融資150万円で調達します。

⑨事業の見通し(月平均)|収支計画の考え方は整体院・整骨院の開業で扱っています

「事業の見通し(月平均)」には、創業当初と、事業が軌道に乗ったあとの売上・経費・利益の見込みを月単位で書きます。整体院・整骨院の売上を単価×来所者数で組み立てる考え方は、整体院・整骨院の開業|資格の線引きと開業資金、補助金が使えない理由で扱っています。この項目では、その考え方に基づいた数字を、公庫の書式の欄に月単位で当てはめて書くことになります。

事業の見通し(月平均)を、売上・経費・利益・確認の順に組み立てる流れの図
売上は来院数×単価×営業日数で出し、利益で生活費と返済をまかなえるかまで確かめます

整骨院の場合、保険施術の分は、請求してから入金されるまでに時間がかかります。開業直後は、売上が立っていても手元にお金が入らない月が出るため、⑧の運転資金を見積もるときにも、この入金のずれを考えておきます。

記入例(架空の整骨院)創業当初軌道に乗った後
売上高70万円110万円
売上原価(消耗品等)2万円3万円
家賃15万円15万円
その他の経費(広告費・光熱費・支払利息等)22万円17万円
利益31万円75万円
売上の根拠1日12人×1人あたり約2,400円×月24日1日19人×1人あたり約2,400円×月24日

院長ひとりで開業する場合、院長自身の生活費と融資の返済は、この利益の中から出すことになります。創業当初の利益で生活費と毎月の返済をまかなえるかを、記入したあとに確かめておきます。足りない場合は、⑧の運転資金を多めに見込むか、自費メニューの構成や価格を見直します。

⑩自由記述欄|アピールポイントと、事業を行ううえでの悩みを書く

「自由記述欄」には、これまでの項目に収まらないアピールポイントと、事業を行ううえでの悩み、希望するアドバイスを書きます。施術所であれば、地域の高齢化や競合の状況といった、自院を取り巻く環境への認識を書き添えることができます。

悩みの欄は、弱みを並べる場所ではありません。どんな助言がほしいのかを具体的に書いておくと、面談のときに相談しやすくなります。

記入例(架空の整骨院)
アピールポイント地域で唯一、夜21時まで施術を受け付けています。
悩み開業予定地域は高齢化が進み需要が見込めますが、自費専門の院も増えており、価格設定に悩んでいます。

FAQ

よくある質問

整体院・整骨院の事業計画書について、よくいただく質問にお答えします。

事業計画書は公庫の書式でないといけませんか?

公庫の書式に従う必要はありません。書式には「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」と明記されています。書式の形式よりも、10項目に相当する内容を書面に盛り込めているかどうかが問われます。

事業計画書は行政書士や中小企業診断士に代わりに作ってもらえますか?

内容について中小企業診断士などに相談し、助言を受けることはできます。一方、報酬を払って申請書類の作成や提出まで代わりにやってもらう場合は、行政書士法の対象になる場合があります。弁護士・税理士など他の法律で認められている専門家を除き、行政書士でない人が報酬を得て代行することは禁じられています。助言と代行の境界は専門家の間でも見解が分かれているため、依頼する前に、相談先がどこまでの業務を行えるのかを確認してください。

整体(無資格開業)でも事業計画書は必要ですか?

無資格の開業であっても、融資を受けるために事業計画書が必要になる点は変わりません。柔道整復師免許の有無による開業の資格の違いは、整体院・整骨院の開業|資格の線引きと開業資金、補助金が使えない理由で扱っています。

持続化補助金の申請にも事業計画書の内容は使えますか?

持続化補助金では、事業計画書とは別に「経営計画書」「補助事業計画書」という書類を書きます。自院の現状と今後の取り組みを書く点は共通しているため、事業計画書に書いた内容を土台にできます。制度の詳しい内容は、整体院・整骨院の補助金|ホームページ制作に使えるものと、対象から外れるもので扱っています。

事業計画書を書いたら、開業後に見直す

事業計画書は、公庫の書式か自作の計画書のどちらであっても、10項目の内容を埋めることがまず必要になります。

内容の相談は中小企業診断士に、申請書類の作成・提出の代行が必要なときは行政書士に確認するというように、相談先を分けて考えると、依頼する範囲がはっきりします。

開業後は、事業計画書に書いた数字をそのままにせず、実際の売上や来院者数と見比べて見直します。損益分岐点比率など、数字の解釈の仕方は整体院・整骨院の経営が厳しい理由|黒字の院との差と、自院の数字の見方で扱っています。

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