整体院・整骨院の交通事故ページ|患者が確かめているのは施術内容ではない

交通事故に遭った人が整体院・整骨院のページを開くとき、その前に保険会社の担当者とのやり取りが入ることがあります。通っていいのか、費用はどうなるのか。判断がつかないまま調べ始めます。
一方で、多くの院の交通事故ページは施術内容の説明から始まります。何を使ってどう施術するか。ですが実際に検索されている語を端から拾っていくと、患者の関心は施術の中身に向いていませんでした。そして、答えようとすると2つの法律に関係してきます。1つは柔道整復師法、もう1つは弁護士法です。
整体院・整骨院の交通事故ページに患者は「通っていいのか」を確かめに来る
院に着く前に、患者は保険会社とやり取りをしている
交通事故に遭った人は、院を探す前に保険会社の担当者と話しています。そこで整体院・整骨院に通うことを渋られたり、先に病院へ行くよう言われたり、「確認します」と保留にされたりします。院のページにたどり着くのは、そのやり取りのあとです。
つまり相手は、施術の良し悪しを比べに来ているのではありません。通った場合にそれが認められるのか、認められなかったら費用はどうなるのかを確かめに来ています。
サイトが説明しているのは施術、患者が聞いているのは可否
院のページが「当院の交通事故施術」を丁寧に説明しても、この問いには答えていません。患者は施術の内容を比較する前の段階にいます。どの順番で何をすればいいのか、誰に何を伝えればいいのか。手続きの地図が要ります。
整体院・整骨院の交通事故で検索されているのは、施術ではなく手続き
Googleサジェストを、あ行からわ行、a〜z、0〜9まで83パターンで叩き、2026年8月に全数を取りました。ベース語は「整骨院 交通事故」で、重複を除いて238語です。
候補に「ダメ」「ダメな理由」が並ぶ
「交通事故 整骨院 ダメ」「ダメな理由」のように、評判そのものを疑う語が7語あります。数としては238語のうち7語で、多くはありません。それでも、ほかの業種なら評判の悪さを疑う並びが候補に出てくること自体が、事情の違いを示しています。さらに「認めない」「許可」のように、通ってよいかを確かめる語は、次に見る32語の側に含まれます。
むちうち、頚椎捻挫、打撲。症状名の語はここで止まる
| 区分 | 語数 |
|---|---|
| 地名・院名を含む語 | 90 |
| 整形外科・病院との関係 | 32 |
| 通院の頻度・期間 | 28 |
| 院側が調べている語(集客・請求実務) | 24 |
| 手続き・保険 | 22 |
| お金 | 17 |
| 症状・施術 | 16 |
| 評判・可否の疑い | 7 |
| ベース語・その他 | 2 |
| 合計 | 238 |
地名や院名を含む90語を除くと、一般語は148語です。このうち症状や施術を指す語は16語しかありません。むちうち、頚椎捻挫、打撲といった語がここに入りますが、全体の1割です。
残りのうち24語は、集客や請求実務を調べている院側の語です。それを除いた108語が、通院してよいか、何回通うのか、誰にどう請求するのか、いくらかかるのかという、患者側の手続きとお金の語です。施術の説明をどれだけ厚くしても、当たっているのは16語だけです。
一番多く検索されているのは、整形外科と併用していいのか
整形外科との併用、転院、医師の許可が繰り返し検索されている
32語の中身は、整形外科と整骨院の併用、同じ日に両方へ行けるか、転院できるか、医師の許可が要るか、2箇所に通えるか、といった語です。「併用できない」「認めない」という否定形も含まれます。患者は、病院と整骨院のどちらかを選ぶ話ではなく、両方をどう扱うかで迷っています。
こうした疑問に答えるページは、施術の紹介ではなく、段取りの説明になります。事故のあと最初にどこへ行くのか、保険会社にはいつ何を伝えるのか、通い始めたあとに何が起きるのか。時系列で並べるだけで、32語の多くに触れられます。症状ごとのページの作り方は整体院・整骨院の症状別ページの作り方で扱っています。
医師の同意と診断書は、根拠が別なので分けて書く
ここで注意があります。「整骨院に通うには医師の同意が必要です」と、支払いの条件のように書いている院のページを見かけます。ですが、この論点には、根拠の異なる2つの話が混ざっています。どちらか一方だけを書くと、かえって不正確になります。
1つは自賠責の側です。自動車損害賠償保障法にも同法施行令にも、柔道整復師の施術に医師の同意を求める条文はありません。ただし被害者請求をする場合は、同法施行令第3条第2項第1号により診断書または検案書の添付が必要で、同令第7条は、保険会社が特に必要と認めるときに指定する医師の診断書の提出を求めることができると定めています。医師の書面がまったく関係しないわけではありません。
もう1つは施術の側です。柔道整復師法第17条は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼または骨折の患部に施術をしてはならないと定めています(応急手当を除く)。これは健康保険か自賠責かを問わない業法上の制限です。交通事故では骨折を伴うことがあるため、「医師の同意は要りません」と一律に書くことはできません。
そのうえで、どこまでの書面を求めるかという運用は、保険会社によっても事案によっても違います。断定して書けば、書いたとおりにならなかったときに患者との間で問題になります。「求められることがあります」「加入している保険会社にご確認ください」という書き方にとどめてください。そのうえで、脱臼または骨折の患部の施術については、医師の同意が必要である旨をページに明示してください。
次に多いのは通院の頻度。書き方を誤ると危ない
「毎日通う」「通いすぎ」「週何回」が同時に検索されている
28語には「毎日通う」「毎日通院」と、「通いすぎ」「どのくらい通う」「週何回」が同時に並びます。多く通いたいという気持ちと、通いすぎではないかという不安が、同じ塊の中に共存しています。何回通えばよいのかを誰も教えてくれない状態です。
この不安に答えるのは院の役割ですが、答え方には気をつけてください。頻度は本来、症状の経過で決まります。それを賠償額の話とつなげた瞬間に、記事の性質が変わります。
頻度を賠償額と結びつけて書かない
「通院日数が多いほど有利になります」「週〇回以上通いましょう」といった書き方は、症状ではなく金額を理由に通院を促す表現です。検索候補には「整骨院 交通事故 不正請求」「水増し」「詐欺」「逮捕」が並んでいます。頻度と金額を結びつけた表現は、この並びと同じ文脈に自院を寄せることになります。
書くとすれば、症状の経過に応じて頻度を見直すこと、通院の判断は施術者と患者で相談して決めること、その2点です。数字を約束しないでください。
慰謝料と保険会社の話は、書くと弁護士法第72条に触れうる
検索語には「慰謝料」「慰謝料 計算」「慰謝料 半額」「打ち切り」「弁護士」が並びます。需要があるので書きたくなる領域ですが、ここには線があります。
条文が禁じているのは「報酬を得る目的で法律事務を取り扱うこと」
弁護士法第72条は、弁護士または弁護士法人でない者について、こう定めています。
「報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」(同条ただし書は、この法律または他の法律に別段の定めがある場合を除いています)
交通事故の損害賠償は、この「一般の法律事件」に当たり得ます。そのうえで、患者ごとの事情を聞いて慰謝料の見込み額を示すこと、保険会社との打ち切り交渉に関与すること、特定の弁護士へつなぐことは、条文が挙げる鑑定・代理や和解・周旋に近い行為です。
ただし実際に第72条に違反するかどうかは、報酬を得る目的があったか、反復継続して「業とする」ものだったかまで含めて、最終的には裁判所が判断します。施術料が法律事務の報酬に当たるかにも争いがあり、施術所や制作会社の側で当てはめを決めることはできません。判断がつかない内容は、書かない方を選んでください。
罰則は2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
弁護士法第77条第3号は、第72条に違反した者を2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処すると定めています。行政指導ではなく刑事罰です。広告規制とは重さが違います。
自賠責保険の制度説明と、個別事件の処理は分かれる
では何も書けないのかというと、そうではありません。制度が定めていることを一般的に説明するのは、個別の事案を扱うこととは別です。
たとえば自動車損害賠償保障法第16条第1項は、被害者が保険会社に対して直接、保険金額の限度で損害賠償額の支払を請求できると定めています。被害者請求と呼ばれる仕組みで、この存在を制度として書くことはできます。書けないのは、目の前の患者の事案について、いくら請求できるかを見立てたり、その請求を代わりに進めたりすることです。
線引きに迷う内容は、書かずに弁護士へつなぐ導線を置く方が安全です。ただし特定の事務所へ誘導して紹介料が発生する形は周旋に当たり得るため、そこは切り離してください。
整体院・整骨院の交通事故ページに、載せる項目と載せない項目
載せる項目
| 項目 | 対応する検索の塊 |
|---|---|
| 事故のあとの流れを時系列で(受診・連絡・通院開始) | 整形外科・病院との関係 32語 |
| 整形外科と併用して通う場合の進め方(要件としてではなく実務として) | 同上 |
| 通院の頻度と期間について、当院での考え方 | 通院の頻度・期間 28語 |
| 窓口で必要になる書類と持ち物 | 手続き・保険 22語 |
| 自賠責保険が使えるかどうかの確認先 | 同上 |
| 自費になる場合の料金 | お金 17語 |
載せない項目
慰謝料の金額と計算方法。通院日数と賠償額の関係。整形外科と整骨院のどちらが金額面で有利かという比較。保険会社との交渉を代行するという表現。この4つは、弁護士法第72条に近づくか、通院日数を増やす動機を示します。
後者は実務上も危険です。この領域は患者側にも疑いの目が向いており、金額を前面に出したページは、その疑いの側に自院を寄せることになります。

もう1つ、表記そのものに規制がかかります。あはき・柔整広告ガイドラインは、広告可能な事項に含まれないものとして「各種保険取扱い」「労災保険取扱い」「自賠責保険取扱い」「交通事故取扱い」を名指しし、これらは医療保険療養費支給申請とは関係がないため広告不可な事項だとしています。施術所の名称に「交通事故専門」「むちうち専門」を入れることも、対象者を限定する名称として不可の例に挙がっています。「交通事故無料」は品位を損ねる内容の例です。
ホームページは原則として広告に当たらないため、これらが直ちに違反になるわけではありません。ただしリスティング広告やバナー広告を出している場合、そこからリンクした先のサイトも、広告と一体的な関係にあるものとして規制対象になり得ます。広告を回しながら交通事故のページを持つなら、この表記は広告可能な事項の側で確認してください。
なお、あはき・柔整広告ガイドラインの掲載すべきでない事項は、広告に当たらないページも含めてサイト全体に及びます。交通事故のページも例外ではありません。チラシで何が書けなくなるかは整体院・整骨院のチラシ規制、ホームページ側で先に確認する項目は整体院・整骨院のホームページで確認したい7項目にまとめてあります。
本記事は法令とガイドラインの一般的な説明であり、個別の事案についての法的判断ではありません。自院のページの表現や、患者から受けた相談の扱いに迷う場合は、弁護士または所管の保健所にご確認ください。
出典:弁護士法、自動車損害賠償保障法、自動車損害賠償保障法施行令、柔道整復師法(いずれもe-Gov法令検索)、あはき・柔整広告ガイドライン(厚生労働省・令和7年2月18日)
FAQ
よくある質問
整体院・整骨院の交通事故ページについて、よくいただく質問にお答えします。
整体院・整骨院のホームページに、交通事故の慰謝料の計算を載せてもよいですか?
載せないでください。弁護士法第72条は、弁護士または弁護士法人でない者が「報酬を得る目的で…その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすること」を禁じています。交通事故の損害賠償はこの一般の法律事件に当たり得るため、患者ごとの事情をもとに慰謝料の見込み額を示すことは鑑定に近づきます。同法第77条第3号は、第72条違反を2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と定めており、行政指導ではなく刑事罰です。ただし違反に当たるかどうかは、報酬を得る目的や、反復継続して業とするものだったかまで含めて最終的には裁判所が判断します。制度そのものの一般的な説明と、目の前の患者の事案を見立てることを分けたうえで、判断がつかない内容は書かずに弁護士へつないでください。
整形外科との併用について、整体院・整骨院のホームページにどう書けばよいですか?
「整骨院 交通事故」で検索されている一般語148語のうち、最も大きい塊が整形外科・病院との関係の32語です。併用、同じ日に両方へ行けるか、転院、2箇所に通えるかといった語が並びます。答えるべきは施術の紹介ではなく段取りで、事故のあと最初にどこへ行くのか、保険会社にはいつ何を伝えるのか、通い始めたあとに何が起きるのかを時系列で並べてください。ただし取り扱いは保険会社や事案によって異なるため、断定せず、加入している保険会社への確認を促す形にしてください。
交通事故で整体院・整骨院に通うのに、医師の同意は必要ですか?
2つに分けて考えてください。自動車損害賠償保障法にも同法施行令にも、柔道整復師の施術に医師の同意を求める条文はありません。そのため「自賠責を使うには医師の同意が必須です」と要件のように書くと不正確です。一方で柔道整復師法第17条は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼または骨折の患部に施術をしてはならないと定めており(応急手当を除く)、これは保険の種類を問わない業法上の制限です。また被害者請求では、自動車損害賠償保障法施行令第3条第2項第1号により診断書または検案書の添付が必要です。ホームページには「求められることがあります」「加入している保険会社にご確認ください」と書いたうえで、脱臼または骨折の患部の施術には医師の同意が必要である旨を明示してください。
通院の頻度を、整体院・整骨院のホームページに書いてもよいですか?
症状の経過に応じて頻度を見直すこと、通院の判断は施術者と患者で相談して決めることの2点であれば書けます。書いてはいけないのは、頻度を賠償額と結びつける表現です。「通院日数が多いほど有利になります」「週〇回以上通いましょう」といった書き方は、症状ではなく金額を理由に通院を促す表現です。検索候補には「整骨院 交通事故 不正請求」「水増し」「詐欺」「逮捕」が並んでいます。金額を前面に出したページは、この並びと同じ文脈に自院を寄せることになります。
交通事故のページに要るのは、手続きの地図
「整骨院 交通事故」で検索されている一般語148語のうち、症状や施術を指す語は16語しかありません。残りの大半は、整形外科との関係、通院の頻度、手続きと保険、お金です。施術の説明を厚くしても、患者が確かめたいことの1割にしか当たっていません。
一方で、慰謝料の見込み額や保険会社との交渉に踏み込むと、弁護士法第72条が禁じている行為に近づきます。安全に書けるのは、制度の一般的な説明までです。今日できるのは、事故のあとの流れを時系列で1本書き、金額の話をそこから外すことです。
整体院・整骨院のWeb集客でお悩みなら
まずはお気軽にご相談ください
ホームページの新規制作・リニューアルから、SEO・MEO、広告運用まで、中小企業診断士が貴院の状況や目標を伺い、何から手をつけるべきかをはっきりさせます。
ご相談内容を確認後、担当者よりご連絡します。