整体院・整骨院の求人 | 媒体の原稿を直すだけでは足りない

整体院・整骨院の院長と応募者が、採用ページと労働条件を確認しながら面談している様子

整体院・整骨院の求人票を書くとき、多くの院は「未経験歓迎」「アットホームな職場です」という言葉を並べます。ですが検索の候補を全数取ると、応募を検討している人が実際に調べているのは、職種や雇用形態、資格の有無といった条件の中身でした。

求人には、患者向けの広告にはない別の法律が関わります。職業安定法が貴院自身に課す表示義務、あはき・柔整広告ガイドラインとの関係、キャリアアップ助成金の加算制度まで、原文にあたりながら順に見ていきます。

目次

整体院・整骨院の求人で、検索されているのは「応募条件」

Googleで「整骨院 求人」と入力したときに出る候補を、あ行からわ行、a〜z、0〜9まで83パターンで叩いて全数を取りました。2026年8月の実測で、重複を除いて168語です。

このうち101語は「〇〇市 整骨院 求人」のような地名を含む語、23語は特定の院名を含む語で、いずれもその地域・その院を探している人の検索です。役職や職種に地名が付いた21語と、ベース語の「整骨院 求人」そのもの1語も除くと、地名院名を含まない一般語は22語まで絞り込めます。

整骨院の求人の検索候補168語から地名と院名を含む語を除くと、応募条件にあたる一般語は22語になることを示した図
「整骨院 求人」の検索候補168語のうち、地名と院名を除いた22語が、採用ページで答えられる範囲です。

一般語22語のうち12語が「誰が応募できるか」に集中する

一緒に検索されている言葉語数
職種・資格(セラピスト/保育士/助手/整体師/柔道整復師/看護師/理学療法士/事務/受付 ほか)12
雇用形態(バイト/パート/業務委託/正社員)4
応募条件のハードル(未経験/資格なし/無資格)3
育児との両立(託児/託児所)2
その他(補助)1

一番多いのは職種・資格の12語で、セラピストや保育士、柔道整復師や理学療法士のように、自分がその職種で応募できるかを調べる語です。次いで雇用形態が4語、未経験・資格なし・無資格という応募条件のハードルが3語、託児・託児所という育児との両立が2語続きます。

経営者側の検索語はほぼ出てこない

22語の性質は、ほぼ全部が「応募する側が、自分がこの職種・条件で受かるか」を調べる語です。経営者側の検索と言い切れる語は、この一般語の中には見当たりませんでした。求人媒体の選び方や採用の進め方を調べる経営者は、別の語で検索していると考えられます。

つまり貴院の採用ページに書くべきなのは、募集要項の体裁ではなく、応募者が知りたがっている条件そのものです。どの職種を、どの雇用形態で、未経験でも受け入れるのか。ここまでがホームページで答えられる範囲で、この先は書く義務がある項目の話になります。あわせて、整体院・整骨院のSNS運用で触れた発信の手段も、採用ページと並行して使えます。

整体院・整骨院の求人は、貴院自身にも表示義務がある|職業安定法第5条の4

求人を出すとき、多くの経営者は求人媒体や採用サイトの運営会社側にルールがあると考えます。実際には、職業安定法第5条の4第1項は、義務の名宛人として「労働者の募集を行う者」を挙げています。求人媒体だけでなく、貴院自身がこの主体に含まれます。

「求人媒体だけの義務」ではない。求人を出す院自身も名宛人

ホームページに求人ページを作って直接募集する場合も、この条文の対象です。厚生労働省の解説も、募集情報の的確な表示について「労働者の募集を行う者」に義務を課すという構成で説明しています。外部の求人サイトを使わずに自院サイトだけで募集していても、義務は消えません。

職業安定法第5条の4の表示義務は求人媒体だけでなく、ホームページで直接募集する院自身にも及ぶことを示した図
表示義務があるのは求人媒体だけではありません。自院の採用ページで直接募集する場合も、同じ条文の対象です。

虚偽の表示・誤解を生じさせる表示の禁止と、正確・最新に保つ義務

同条は、募集に関する事項について、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています。あわせて、募集情報を正確かつ最新の内容に保つ義務も課しています。給与や勤務時間を書いたまま数年放置し、実態と離れた条件が残っている採用ページは、この義務に照らして問題になり得ます。

2024年4月から、自社ホームページの求人にも明示事項が3つ増えた

厚生労働省のリーフレット「求人企業の皆さま 募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」は、2024年4月1日の施行にあわせて、明示すべき事項に次の3つを加えました。

追加された明示事項内容
従事すべき業務の変更の範囲入社後に配置転換がある場合、変わりうる業務の範囲
就業場所の変更の範囲将来的に異動がある場合、変わりうる勤務地の範囲
有期契約を更新する場合の基準契約社員・パートなど有期雇用で、更新の判断基準

このリーフレットは、自社ホームページでの募集も対象に含まれると明記しています。求人媒体に載せる原稿だけを直して、自院サイトの採用ページを更新していない場合、この3項目が抜けたままになっている可能性があります。

出典:職業安定法(e-Gov法令検索)、求人企業の皆さま 募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!(厚生労働省)

整体院・整骨院の採用サイトに、未経験・無資格・託児をどう書くか

先ほどの22語のうち、応募条件のハードルと育児との両立にあたる5語は、採用ページの書き方だけで答えられます。

未経験・資格なし・無資格の3語が並んで出る理由

未経験・資格なし・無資格という3語が並んで検索されるのは、柔道整復師理学療法士の資格がなくても働けるのか、受付や助手としての募集なのかを、応募者側で判断できないからです。院内で当然と思っている前提でも、採用ページに書かなければ伝わりません。募集する職種ごとに、資格が必須か任意か、無資格から始めて資格取得を支援する制度があるかを、1行ずつ分けて書いてください。

託児・託児所は、書くと応募が変わる可能性がある福利厚生

託児・託児所という2語は、子育て中の応募者が働き続けられるかを判断する材料です。院内に託児所がなくても、近隣の預け先との提携や、勤務時間の融通が利くことを書けば、同じ検索に応えられます。福利厚生の欄を給与や休日と同列に置くのではなく、応募条件の近くにまとめて書くと、探している人に届きやすくなります。

採用サイトに、募集職種ごとの雇用形態・資格の要否・福利厚生を分けて書くだけで、22語の大半に答えられます。書く場所は求人媒体の原稿ではなく、貴院自身の採用ページです。

応募の窓口をLINEにそろえる場合の考え方は、整体院・整骨院のLINE予約で患者向けの導線として扱っています。

整体院・整骨院の求人広告は、あはき・柔整広告ガイドラインの対象になるか

チラシホームページの表現を広告規制に照らして考えてきた流れで、求人広告もガイドラインの対象になるのかという質問を受けます。

広告の3要件(誘引性・特定性・認知性)

あはき・柔整広告ガイドライン(令和7年2月18日 厚生労働省)は、広告に該当するかどうかを

①誘引性
②特定性
③認知性

の3要件で判断するとしています。誘引性とは、利用者を施術所等に誘引する意図があることです。

求人広告は「患者の誘引」ではないため対象外と解されるが、断定はできない

この誘引性は、ガイドラインの規定上「利用者」を前提に書かれており、患者を施術所に誘引する広告を想定した要件です。求人広告が誘引しようとしているのは応募者であり、患者ではありません。この点から、求人広告はガイドラインの対象外と解される可能性があります。

ただし、ガイドライン全46ページに求人広告への直接の言及は一切なく、この整理はあくまでガイドラインの規定構造から導いた解釈にとどまります。断定はできないため、求人広告の中で施術の効果や実績をあわせてうたう場合は、対象になり得るものとして表現を控えるのが安全です。チラシとホームページで対象・対象外が分かれる考え方は整体院・整骨院のチラシ規制で扱いましたが、求人広告はさらにその外側にある、と考えるのが今のところ妥当です。

出典:あはき・柔整広告ガイドライン(令和7年2月18日 厚生労働省)

整体院・整骨院の求人とキャリアアップ助成金|正社員化に加算がある

採用にかかる費用を助成金で賄えないか、という相談も受けます。厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」によると、正社員化コースには、自ら管理するウェブサイト等に転換内容を公表した場合の加算があり、金額は1事業所20万円(大企業15万円)です。

自社ホームページでの公表が条件の加算がある(1事業所20万円)

非正規雇用のスタッフを正社員へ転換したうえで、その内容を貴院のホームページで公表すると、この加算の対象になり得ます。パートや業務委託で働くスタッフを正社員化する計画がある院にとって、採用ページは公表の場としても機能します。

公表すべき情報の詳細は、社会保険労務士や労働局への確認が必要

ただし、何をどこまで公表すれば加算の対象になるかという実務の詳細は、案内のパンフレットに記載がなく、現時点では確認できていません。申請の可否や公表内容は、支給要領を確認したうえで社会保険労務士や労働局に相談してください。制度そのものと、対象になりにくい補助金との違いは整体院・整骨院の補助金で扱いました。

出典:キャリアアップ助成金のご案内(厚生労働省・令和8年4月8日版)

FAQ

よくある質問

整体院・整骨院の求人・採用ページについて、よくいただく質問にお答えします。

整体院・整骨院の求人ページに、職業安定法の何を守ればよいですか?

職業安定法第5条の4第1項は、義務の名宛人として「労働者の募集を行う者」を挙げており、求人媒体だけでなく貴院自身がこの主体に含まれます。募集に関する事項について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、募集情報を正確かつ最新の内容に保つ義務もあります。さらに2024年4月1日の施行にあわせて、従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期契約を更新する場合の基準という3つの明示事項が追加されました。求人媒体の原稿だけでなく、自院の採用ページも同じ内容を反映しているか確認してください。

未経験や無資格でも応募できることは、採用ページにどう書けばよいですか?

「整骨院 求人」で検索されている一般語22語のうち、未経験・資格なし・無資格の3語は、資格がなくても働けるのかを判断できずに検索されています。募集する職種ごとに、資格が必須か任意か、無資格から始めて資格取得を支援する制度があるかを1行ずつ分けて書いてください。あわせて託児・託児所という2語もよく検索されており、院内に託児所がなくても、近隣の預け先との提携や勤務時間の融通が利くことを、応募条件の近くにまとめて書くと届きやすくなります。

整体院・整骨院の求人広告は、あはき・柔整広告ガイドラインの対象になりますか?

あはき・柔整広告ガイドライン(令和7年2月18日 厚生労働省)は、広告の該当性を誘引性・特定性・認知性の3要件で判断するとしており、誘引性は利用者を施術所等に誘引する意図を前提に書かれています。求人広告が誘引しようとしているのは応募者であり患者ではないため、対象外と解される可能性があります。ただしガイドライン全46ページに求人広告への直接の言及はなく、この整理はガイドラインの規定構造から導いた解釈にとどまるため断定はできません。施術の効果や実績をあわせてうたう場合は、対象になり得るものとして表現を控えてください。

キャリアアップ助成金の加算を受けるには、採用ページに何を書けばよいですか?

厚生労働省の「キャリアアップ助成金のご案内」によると、正社員化コースには、自ら管理するウェブサイト等に転換内容を公表した場合の加算があり、金額は1事業所20万円(大企業15万円)です。非正規雇用のスタッフを正社員へ転換し、その内容を貴院のホームページで公表すると対象になり得ます。ただし何をどこまで公表すれば加算の対象になるかという実務の詳細は、案内のパンフレットには記載がなく、現時点では確認できていません。申請の可否や公表内容は、支給要領を確認したうえで社会保険労務士や労働局に相談してください。

採用ページに、まず3行を足す

「整骨院 求人」で検索されている一般語22語のうち、大半は応募者が自分の職種・雇用形態・条件で受かるかを調べる検索でした。どの職種を、どの雇用形態で、未経験でも受け入れるのか。ここまでを書くだけで、多くの検索に答えられます。

そのうえで、職業安定法第5条の4が求める表示義務は貴院自身にもかかる点を見落とさないでください。今日できるのは、募集する職種と雇用形態、資格の要否を採用ページに3行足すことです。

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